食べもの好き嫌い克服術

[第1回]好き嫌いは克服しなくてもいい!?目からウロコの克服術とは

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「野菜を食べない!」「決まったものしか食べてくれない」「ウチはお肉がだめ」…。わが子の好き嫌いに悩まされ、時に振り回されてしまうママたちへ。子どもの食事のスペシャリスト・東京家政大学の加藤初枝先生にお話をうかがってきました。先生の口からは思いがけない言葉が!?

好き嫌いは克服しなくてもいい!?

こんなことを言ったら、びっくりされるかもしれません。私は、子どもの好き嫌いは克服しなくてもいいと思っているのです。「克服術」と題しているのに、肩透かしですよね。

でも、子どもの体はまだ発達している途中なのです。噛む力はとても弱く、大人の咀嚼力にはとうてい及びません。歯だってまだ生え揃っていないのです。食べ物を上手に噛みくだくことが出来ず、食べようと思っても食べられないのです。内臓もまだまだ完成形ではなく、消化・吸収能力も充分ではありません。食べられないものがあるのは当たり前なのです。

また、たいてい子どもたちは苦味や酸味のある食べ物が嫌いです。それは、苦味=毒酸味=腐っているもの、と判断しているからです。一歩間違えば、命に関わりますから本能的に排除しているのです。

子どもはただ、「食べられない」だけなのに、大人の目にはわがままな好き嫌いを言って「食べない」ように映ってしまっているのです。
ですから「好き嫌いは克服するもの」というより、体の成長と共に食べ方が上手になってくれば、いずれ食べられるようになると、ゆったりとかまえた方がいいのです。「バランスよくなんでも食べなきゃダメ」なんてことはないのです。子どもに好き嫌いがあるのは当然のこと。だから無理やり好き嫌いを直そうと、躍起にならないでほしいと思うのです。

食べ方は時間をかけて学んでいくもの

大人は食べ物を口に入れると、もう無意識のうちに咀嚼しています。食べ物の固さや柔らかさを目で見て予測して、舌や歯で確認しながら味わうということを、瞬時にやってのけることができます。

でもそれは、子どもの頃から積み上げられた経験によって培われたもの。私たち大人も最初からできたわけではないでしょう?
子どもたちは歯をどう使えばいいのかさえ、まだわかっていないのです。

たとえば、じゃがいもとにんじんとキャベツでは、味だけでなく、歯ごたえも噛み切り方も噛み砕き方も、舌の上の食感もにおいも何もかも全部違います。それぞれの食材に合った歯の使い方、噛む強さや頻度、口に入れる量など、1つ1つを試しながら学んでいるのです。

1回や2回食べなかったからといって、いえ、5回や10回食べなかったからといって、その食べ物が嫌いなわけではないのです。まだ学びの途中、というだけなのです。
子どもはいろいろな食べ物の食べ方を行きつ戻りつしながら学んでいきます。一歩進んで二歩さがる、かと思うと横道にそれたりして。1歳のときにお豆を全く食べなかったのに、2歳になったら急に食べるようになった子がいます。

その逆もあります。大好きで食べていたものをある日突然食べなくなったり、子どもにもどうも“味のマイブーム”というのがあるようです。

1つの食べ物の噛み砕き方や飲み込み方を覚えたら、それをしつこいほど存分に味わう。そして十分堪能したら新たな味を探しに行く――。こうして経験を積んでいるのです。

だから、どうかママはあせらないで、好き嫌いを決めつけることなく、できる範囲で調理法を変えたり、固さや切り方を変えたりして食卓に並べてほしいのです。

公開日:2015/01/19