薬物療法で精子力を高める
精液検査を数回やってみると、結果はその時々でかなりバラツキがあることがわかります。仕事が忙しくて睡眠不足だったり、人間関係でトラブルを抱えていたり、体調不調やストレスが精液の状態にも影響することは十分に考えられます。
精液中の精子は、睾丸で3ヶ月前に作られたものなので、本来は「今のストレス」は関係ないはずです。でも、診察にあたっていると、人工授精をするときに限って精子の状態が悪くなる方がいます。医学的には解明されていませんが、現在進行形のプレッシャーも、体のどこかに影響を及ぼしているのでしょう。
男性不妊の原因は、はっきりわからないことも多くあります。その場合は、原因をひとつひとつ探りながら、効果のありそうな治療を行っていきます。
精液の状態が悪いけれど、原因となる病気がみつからない場合は、補中益気湯(ほちゅうえつきとう)や八味地黄丸(はちみじおうかん)など、造精機能を高める漢方薬を処方することもあります。
漢方は人によって相性があるようで、まったく効果が出ない人もいれば、すばらしく精子の状態がよくなる人もいます。
また、血液検査でホルモン分泌をチェックして、クロミフェンなどホルモンに効く薬を処方します。
当院では、サプリメントも処方します。亜鉛、ビタミンE、ビタミン12などのサプリメントを服用すると、精子を作る働きが高まり、精液の状態がよくなるというデータがあるためです。
巷には、「納豆やトロロなどネバネバ系の食べ物が精子にいい」という話もありますが、医学的な根拠はありません。また、アンデス山脈に生育するマカを使った加工食品を服用しておられる男性も沢山いらっしゃいますが、男性不妊に効くというはっきりとしたデータはありません。
なんにせよ、3ヵ月以上服用したら、精液検査を受けて効果を確認するのが良いでしょう。
(2011年5月から掲載)