母乳育児率80%、そのヒケツは…

当院、日本赤十字社医療センター(以下、日赤)では、生後1ヵ月時点での母乳育児率は80%。全国の平均値45%と比べると、本当に多くのママが母乳育児を続けています。

その成功のポイントはいくつかあるのですが、まずは、妊娠中から準備を始めること。母乳育児は赤ちゃんを産んでから突然はじまるものではなくて、妊娠中からの積み重ねが大切なんです。

母乳は、赤ちゃんにとって最高の栄養源。母子の絆づくりやお母さんの産後の体にもいい。母乳で育った子どもは、5~6歳になったとき肥満の割合が25%少なく、大人になってからの糖尿病発症リスクが低くなることがわかってきています。だから、今、世界中で母乳育児支援に力を入れているんですね。

こういった情報を妊娠中からお伝えして、ママたちが「おっぱいで育てたい!」という気持ちを育んでいけるように取り組んでいます。

そして、妊娠中に乳首の状態をチェックし、お手入れをしておくこと。

最近は「自分の乳首を触ったことがない、見たこともない」という方が多いんです。自分の乳首が、身近な存在ではないんですね。それを赤ちゃんにふくませようとしても、おっかなびっくりになって戸惑うのは当然。

妊娠したら、自分はどんなおっぱいをしているのか、観察しましょう。乳首の形は十人十色。小さい人もいれば、大きい人もいるし、まあるい人、へこんでいる人など、さまざまです。

また、乳頭が短く5mm以下の「扁平乳頭」や、乳首がへこんでいる「陥没乳頭」は2~3%の人にみられますが、赤ちゃんが吸い付きにくいので、妊娠中から乳頭をひっぱりだしておきましょう。

乳頭の形

ふつうの乳頭

illust_a_1_240_16_0_f

陥没乳頭

illust_a_2_240_16_0_f

扁平乳頭

illust_a_3_240_16_0_f

「扁平乳頭」の場合は、乳首を指でつまんで軽くねじり、そうっと前に引き出します。

illust_b_240_16_0_f

「陥没乳頭」は、乳首の周りを指で奥に押すと、乳首が自然に前にてくることもあります。

illust_c_240_16_0_f

難しければ、助産師さんに相談してみましょう。

最初は慣れない刺激に乳首が痛むと思いますが、赤ちゃんのためにぐっと我慢。また、本当は夫に吸ってもらって、乳首を出すのも有効なんです。

(2010年8月から掲載)