歯の役割

“歯”は豊かな人生のため

「歯は大事に!」――みなさん、親からも歯医者さんからも、耳にタコができるほど言い聞かされてきたと思います。でも、どうして歯が大切なのか、あまり教えられたことがないのではないでしょうか。

歯の一番大切な役割は、口の中で食べものを噛みくだいたり、すりつぶしたりすること。細かくしてから胃腸に送り込むことで、消化を助けています。また、噛むことで口の中に唾液が出てきて、ご飯やパンなどの炭水化物(でんぷん)が分解、消化されます。

虫歯などで歯が痛いと、しっかり噛むことができません。食べ物を大きいサイズのまま、唾液でじゅうぶんに分解されないまま、飲み込むことになるので、胃腸に負担がかかって効率よく栄養を吸収できません。

また、噛まないですむものばかり食べていると、栄養のバランスが崩れたり、丸飲みや早食いして肥満になりやすくなります。歯の健康は、全身の健康につながっているんです。

それだけではありません。せっかくのご馳走も「歯がズキズキするなぁ」「噛みにくいなあ」と思いながらでは、ちっとも楽しくない。言葉を話すときも、歯が欠けていると発音がはっきりしないし、笑顔も前歯が虫歯ではステキさも半減……。

大人も子どもも、「美味しく食べて、楽しく話す」ことは人生の大きな喜びの一つ――豊かな人生のためにも、歯は大切なんです。

自然の歯に勝る人工歯はない!

虫歯ができたら削って詰めればいいし、歯が抜けたらブリッジや入れ歯を入れることもできます。歯科治療は日々進歩していますから、治療も昔ほど痛くなくできますし、詰め物やかぶせ物も見た目が美しく丈夫な素材が登場しています。

それでも、自然な歯とまったく同じというわけにはいきません。治療後に歯の間に食べ物のカスが挟まりやすくなったり、なんとなく違和感があったり……。年齢とともに、歯ぐきの高さも変わってくるので、かぶせ物と歯との境目が目立ってくることもあります。

また、歯の根の周囲には歯根膜(しこんまく)という軟らかい組織があり、そこに圧を感じるセンサーがあります。髪の毛1本噛んだだけでも感じ取れる鋭いセンサーで、そこからの情報で噛む力や回数を調節しています。自分の歯でしっかり噛むことで、触感を楽しみながら、食べ物の大きさ・硬さに応じた食べ方ができるのです。

一度、自分の歯を失うと、どんなにお金を出しても、元の歯を取り戻すことはできません。口の中に、自分だけの宝石がある――こまめにケアをして、この大切な歯を守っていきましょう。

乳歯の虫歯は永久歯にも影響

歯は一生の宝物……でも、乳歯はいずれ抜けるものだから、虫歯になってもいいじゃない?と思うかもしれません。しかし、乳歯をなおざりにして永久歯だけを守ることはできないんです。

ママのお腹に赤ちゃんができたばかりの妊娠7~10週頃に、すでに乳歯の小さな芽がつくられています。そして、赤ちゃんが生まれる前から、歯ぐきの下にある歯槽骨(しそうこつ)の中で、永久歯も少しずつ少しずつ育ちはじめているんです。

乳歯の根のほうまで虫歯が進行してしまうと、そのすぐ下で育っている永久歯に影響がでやすくなります。歯の表面のエナメル質がうまく作られず、白い斑点(白斑・はくはん)や黄褐色の斑点(黄褐色斑・おうかっしょくはん)ができたり、歯の形に異常が出ることもあります。

乳歯には、永久歯が生えてくる場所を確保して、誘導する役目もあります。虫歯などによって乳歯を早い時期に失ってしまうと、あいた隙間に両隣の歯が動いてきて、永久歯が正しい位置に生えられないことがあります。また、乳歯が永久歯に生え替わる時には、乳歯の根が溶けて永久歯が育ってきます。永久歯に生え替わる時期に、乳歯が重症の虫歯になっていると、うまく根が溶けないで永久歯が生えにくくなることもあります。

乳歯から永久歯へは、一瞬で生え替わるわけではありません。6歳から12歳くらいまでの間に、徐々に生え替わっていきますから、乳歯と永久歯が混在している時期が長いのです。生えたばかりの永久歯は、エナメル質がやわらかいので、乳歯に虫歯があると虫歯菌が永久歯にもつきやすく、虫歯になりやすいものです。

乳歯を大切にすることは、将来の永久歯を守ることにもつながるのです。

歯が子どもの心と体を育てる

赤ちゃんの歯は、子どもの食べる技能の発達と連動しています。前歯が揃って、奥歯も生えてくる1歳半頃になると、自分の一口大に合わせて食べ物を噛み切ったり、ちょっと硬めの食べ物を奥歯ですり潰すことができるようになります。3歳頃に奥歯が生え揃うと、大人と同じように、色々な食べ物を楽しめるようになります。

この時期に、子どもに重症な虫歯ができると、噛まずに飲み込んだり、痛い歯をかばって片側だけで噛んだり、硬い食べ物を嫌がるようになります。噛むのが嫌いになって、食べる意欲をなくしてしまうことも……。

子どもは食べ物を噛むこと(咀嚼・そしゃく)によって、唇や舌の動きが発達したり、顎や口の筋肉が発達していき、言葉をしゃべることにもつながってきます。よく噛むとその刺激が脳に伝わって、脳の発達も促されます。「家族でご飯を食べるのは楽しい!」「食べものって美味しい!」という豊かな感性も育まれます。歯や口の働きが、子どもの全身の発達を支えているんです。

子どもの健やかな成長と人生のために、ぜひ、今日から歯のケアにしっかり取り組んで、歯を守り育てていきましょう!

(2008年12月から掲載)

「子どもの歯のはなし」の記事一覧

  1. 図解!乳歯のしくみ
  2. 子どもの歯の発達
  3. 虫歯ができるメカニズム
  4. 年齢別・歯のケア方法
  5. 仕上げ磨きのテクニック
  6. 虫歯を防ぐ6つの生活習慣
  7. 子どもの歯なんでもQ&A

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