診断名にこだわらない
病気のうつと、産後のホルモンの嵐による一時的な落ち込みとの違いはどこにあるの? 私の場合は病気なの? そうじゃないの? どっちなの?
こうした質問を受けることがあります。学問的には、産後1~2週間、長くても1ヵ月程度で軽快していくのがマタニティブルー。これは「病気ではなく」、一時的な情緒不安定の状態です。
一方、症状が2週間以上続いて、症状がひどくなっていく場合は、産後うつとして、「病気」と診断します。
しかし、そうした線引きは、現実的にはあまり意味がないと思っています。
たとえば、産後、「つらいのはまだ産後2週間目だから。ホルモンのせいで仕方ないんだから、がんばらなきゃ」という人がいるとします。でも、この人がマタニティブルーか産後うつなのか、その時点ではわからないでしょう。
この人がつらい状態を我慢した挙句、2か月後にやっぱりよくならなくて、ここで初めて、「私、産後うつかしら?」と思ったとします。しかし、時間が経ってしまったがゆえに、子育てや家庭にいろいろな問題や悪影響が出てきてしまっていたとしたら、なんでもっと早く手を打たなかったのだろうと思いませんか。
「つらい」と感じたときに我慢せず、だれかに相談したり、病院に行けば、もっと早く解決できたのです。ですから私は、診断名はあくまでも「つらい状態がどのくらい続いていたか」という結果論であり、レッテルに過ぎないと思っています。
マタニティブルーでも産後うつでも、育児ブルーでも、うつでも、とにかく「つらい」という状態は一緒。だから、診断名にこだわらないで欲しいのです。自分が「つらい」、と思ったときが、だれかに相談するとき、どうしたらラクになれるかを考えるときなのです。
(2011年11月から掲載)