偏見を捨ててラクになろう
「つらい」と思ったとき、一番していけないことは、それ以上がんばることです。ただでさえ体も回復していない、育児も大変な時期に「病気じゃないんだから、がんばる」なんてことはしてはいけません。
そこが落とし穴なんです。それが悪化の元なのです。ですから、つらい場合は、まずがんばることをやめること。心身を休ませることです。早めに専門家に相談をしましょう。
しかし、精神科や心療内科に行こうと思っても、ここでまた悩む人がいます。
「そんなところに行って、おかしく思われないだろうか」と。患者さんは病で悩み、偏見で悩むというダブルショックなんですね。偏見のなかには病名や精神科への偏見、さらに抗うつ剤などの薬に対する偏見があります。
その考え方をぜひ、変えてください。
薬を例にとりましょう。たとえば、「眠れないから薬を飲んでぐっすり眠れればいいんだわ」という考え方の人と、「薬なんか飲んじゃいけない」「毒だわ、クセになるわ」と頑張って飲まない人がいますね。ヨレヨレになって重症化するのは、たいてい後者の人です。
どっちがいいかでしょう。薬の毒を考えるか、眠れない毒を考えるか。
「薬を飲むとやめられなくなる」「痴ほう症になる」などのさまざまな偏見を持っている人がいますが、そんなことはありません。うつの薬で痴ほう症になどなりませんし、医師の処方を守っていれば、クセになったりもしません。
今は薬も日進月歩。どんどん進化して、副作用の少ないいい薬がたくさん出てきています。
また、薬を飲むとおっぱいをあげられないから飲まない、という人がいます。確かに薬を服用している間、母乳は禁止です。しかし、これも考え方を変えてください。
薬を飲まずに不調のままで、イライラしながら怖い顔、悲しい顔で抱っこしておっぱいをあげることがいいのか。それとも薬を飲んでラクになって、笑顔で子どもにミルクをあげるのがいいのか。どっちでしょうか。
私は、できるだけ子どもは福々と育てたらいいと思っています。お母さんがニコニコしていると、赤ちゃんは安心するのです。大人だって、怖い顔した人とごはんを食べたくないでしょう?
それでもやはり精神科や心療内科には行きたくないというのであれば、保健師さんや助産師さんに相談してください。
まずは1人でがんばらず、助けを求めてラクになることが大事なのです。ママがラクになること。それが赤ちゃんのためなのですよ。
(2011年11月から掲載)