重い感染症や後遺症から子どもを守る「予防接種」
大人に比べて、乳幼児の免疫はまだ未発達な状態です。乳幼児はさまざまな感染症にかかることで、徐々に病気に対抗するための「抗体(こうたい)」を獲得していきます。10歳頃にようやく大人と同じレベルの免疫システムができあがります。
人間が病気にかかるのはごく自然なことですが、しかし、一部の感染症にかかると重い後遺症が残ってしまったり、特効薬が無いため命を落としてしまうことがあります。こうした病気を防ぐために行われているのが「予防接種」、つまりワクチンの投与です。
ワクチンには、発症しない程度に弱められた病原体(細菌やウィルス)などが含まれています。ワクチンを投与すると、体は「病原体が侵入してきた」と判断し、それを撃退するための「抗体」を作り出します。
一度、作り出された「抗体」は体に記憶されて、将来、再び同じ病原体が侵入してきたときに、すみやかに大量の抗体を作り出します。感染症から身を守り、たとえかかったとしても重症化を防ぐことができるのです。
現在、日本の乳幼児の死亡が少なくなってきたのは、衛生的な環境や栄養バランスのよい食生活、医療の普及など様々な要因がありますが、とりわけ予防接種の功績は大きなものです。
予防接種が発明される前は、多くの乳幼児が感染症で亡くなっていましたし、今でも途上国では多くの子どもたちが命を落としています。人類の歴史は、感染症との戦いです。どうにかして病気で亡くなる人を減らしたい、その一心で、ワクチンの開発が進められてきました。
(2012年5月から掲載)