予防接種を受けないとどうなる?
生まれて間もない赤ちゃんは、母親から胎盤を通して伝わった免疫をもっていますが、これは大人の免疫システム全体のごく一部です。母乳には母親の免疫が含まれていますが、これもごく一部の免疫です。すべての感染症を防げるわけではありません。また、かかってしまった場合は、体が未熟なので重症化しやすいのです。
「感染症にかかったほうが、より強い免疫ができるから」と、ワクチンを避けたり、感染パーティーと称してわざと病気をもらう方もいるようです。確かに、感染症にかかって無事に回復することができれば、強い免疫が得ることができますが、その前に、重い後遺症を残したり、亡くなってしまう子がいます。それを避けるために開発されたのがワクチンなのです。「免疫をつけるために、病気にかかる」という発想は、本末転倒です。
たとえば、おたふくかぜは、髄膜炎や難聴を引き起こすことがあります。難聴は大人になっても治りにくく、問題になっています。精巣炎や卵巣炎を合併すると不妊のリスクもあります。
麻疹(はしか)は、幼い頃にかかると比較的軽く済むこともありますが、肺炎や脳炎など重い合併症が起きることがあります。また一見、麻疹が治ったように見えても、7~10年後に「亜急性硬化性全脳炎」という合併症を起こし、知能低下やてんかんなどが起こり、死亡することもあります。
日本脳炎は、豚がもつウイルスが蚊によって運ばれて伝染する病気ですが、九州や中国地方など西日本では多くの豚が今でもこのウイルスを保有しています。発症すると治療法がなく、感染者の50%にてんかんや発達の遅れなどの後遺症が残ります。
水ぼうそうは、多くの子どもが経験するものなので、大したことないと思われがちです。しかし、一度かかると、治ってからもウイルスが体内にひそんでいて、ストレスや疲労、加齢などによって免疫力が低下したときに「帯状疱疹(たいじょうほうしん)」を発症します。後遺症として、強い痛みや顔面麻痺、聴覚・味覚障害を残すことが多いのです。
感染症にかかると、子ども自身が苦しいばかりでなく、家族にも、看病や通院などさまざまな負担がかかります。家庭内や保育園・幼稚園でうつしてしまわないかという心配もあります。妊娠中の人は胎児への心配もあるので、負担はなおさらです。
子どもへの予防接種は、家族全員の健康を守ることにもつながります。
(2012年5月から掲載)