9割以上は無事。でもノーリスクじゃない

高度な医療施設のある病院を勧める理由は、医療技術的に大きな違いがあるわけじゃありません。医師が大勢いる、つまりマンパワーがあるからなんです。

僕自身は麻酔もできますし、未熟児の医療も20年やってましたから、小さな赤ちゃんも助けられます。お母さんの帝王切開もできます。でも一人で同時に3つのことはできません。

それよりも、3人の医者がいて、一人が麻酔して、一人が手術して、一人が赤ちゃんの蘇生をしてくれたほうがはるかにいいんです。それがマンパワーで、リスクのあることに対応しようと思ったら、絶対にマンパワーは必要なんです。

いろいろリスクのことばかり話してきて、不安になった妊婦さんもいると思いますが、でもお産の9割以上は自然に無事に生まれるんです。その人に関しては、一人の医師でも十分なんです。

低いリスクの人に関しては、一人の医師でいいけれど、その低リスクの中でもわずかでもアクシデントが起こる可能性がある。ローリスクといっても、ノーリスクじゃないことは認識してもらいたいのです。

「自分はローリスクだけど、何かあるかもしれない。けれど、こっちを選びましょう」と、自己責任でお産する施設を選んでほしいのです。

自分が病気を抱えていてハイリスクなのに助産所に行くのは問題だけど、自分がローリスクなのにお金があるからって遠くの高度な医療施設に行くのも問題がある。 そのあたりは妊婦さんが賢く選んで、医者もきちんと対応していかなければならないと思っています。

(2006年9月から掲載)