薬は気軽に飲んではいけない

妊娠中にうっかり飲んでしまった薬については、「まず問題ない」と考えていいのですが、こういうと、「だったら薬は飲んでもだいじょうぶ」「注意しなくていいんだ」という人がいる…。これは大きな間違いです。

“うっかり飲んだ薬”について「だいじょうぶ」といっているだけで、むやみに使ってだいじょうぶなのではありません。

薬は安全だから飲むものではなく、「必要だから飲むもの」です。

薬がその人にとって必要であれば、リスクがあるとわかっていても使うことがありますし、必要がない薬はいくら安全でも使いません。これが大前提です。

たとえば、風邪に効く薬はありません。風邪薬というのは、風邪の症状を抑えるだけで、原因であるウイルスに効くわけではありません。

ですから、「妊娠中に風邪を引いて薬が必要」という場合は、「今どういう症状があって、どの症状を軽くすることがメリットになるか」ということで、薬を処方してもらうのが原則です。

私たち医師は、熱が高ければ熱さましを、咳が出ていれば咳止めの薬を処方します。

ところが市販の総合感冒薬というのは、熱や喉の痛み、咳、鼻水など、風邪の諸症状をやわらげる薬が、多岐にわたって入っています。ですから、その人にとって本来必要ない成分がいっぱい入っているのです。

いくら「安全」といわれる薬でも、妊娠という大事な時期に必要のない薬を飲むのは避けるべきです。妊娠中に薬が必要な場合は、妊娠していることを医師に告げて、必要な薬を処方してもらうのが原則です。

(2007年9月から掲載、2014年11月改訂)