厳しい体重管理は必要?

妊娠性高血圧症候群(妊娠中毒症)や妊娠糖尿病を予防するために、どんな体格のお母さんでも、妊娠中の体重増加を7~8㎏以下にしましょうと、体重管理を指導される場合があると聞きます。

その場合、皆さんは太らないように努力します。

どうするかというと、食欲をガマンしてあまり食べないんですね。また妊娠前から少食になれている場合には、妊娠中もあまり多く食べられない人もいるようです。

お母さんが充分に食べないと、胎児の発育に必要な栄養が、充分な量、届かないのです。栄養が届かない赤ちゃんの体重は、当然、小さくなります。

妊娠してからの栄養だけが問題なのではありません。今、みなさん、とてもダイエット志向が強く、妊娠前からやせている人が多い。これも未来の赤ちゃんの健康に望ましくありません。

肥満度を計るBMIという指数をご存知だと思います。これは、体重(㎏)÷{身長(m)×身長(m)}で計算しますが、この結果、18.5~25未満が「ふつう」、18.5未満が「やせ」と評価します。日本の20代の女性は、21~25%が、18.5未満の「やせ」。地域によっては、25%を超えているところもあります。これから妊娠しようという若い女性の、4人か5人に1人が「やせ」なのです。

「やせ」の状態で妊娠するとどうなるでしょう?

受精卵にとっては、卵管や子宮の栄養状態は重要な環境です。しっかり栄養のとれている人とそうでない人では、この卵管や子宮の中の栄養状態が必ずしも同じではないのです。

妊娠すると、受精卵はさかんに細胞分裂を起こします。妊娠に気づかない初期のころに、すでに赤ちゃんの心臓や脳など大切な器官のもとがつくられるのです。この時期の栄養状態はそれぞれの遺伝子が未来にわたってどう働くか、という遺伝子の発現制御系に大きく影響します。

この時期やその後の妊娠中の大切なときに低栄養にさらされると、赤ちゃんの遺伝子には、生まれたあとも少ない栄養でも生きていけるようにスイッチがはいります。

(2008年8月から掲載)