葉酸不足が招く障害

母体の栄養不足は、赤ちゃんの障害にもつながります。

たとえば、生まれつき脊椎や神経にトラブルがある二分脊椎症(にぶせきついしょう)の赤ちゃんが増えています。二分脊椎症は先進工業国では減っているのに、唯一、日本だけが増えているのです。

この病気はまだ原因がわかっていない部分もあるのですが、妊娠初期に葉酸をじゅうぶんに摂取するとリスクを減らせることがわかっています。

葉酸は緑黄色野菜や果物などに豊富に含まれています。野菜中心の和食を食べてきた日本では、葉酸が不足することはない、と考えられていました。しかし、食生活が変わり、食べ物からだけで葉酸を充分な量を摂取することが難しくなってきました。そこで厚生労働省が発表した「食事摂取基準」(2005年版)でも、葉酸はサプリメントでもとるべきだと言われています。

栄養はできるだけ食事でとろうというのが「食事摂取基準」の基本的な考え方なのですが、唯一、葉酸は今の食生活で食べ物からだけでは充分とれないので、サプリメントも考慮して必要な量をとりなさい、と言っているわけです。

アメリカやカナダなどでは、小麦などの穀物に葉酸を強制的に添加して摂取することをすすめています。その結果、二分脊椎症は減ってきています。

また葉酸には、将来の成人病発症リスクを下げるという可能性もあります。

葉酸は、遺伝子が正しく働くために必要な栄養です。同じ遺伝子配列の人でも、病気になる人もいるし、病気にならない人もいますが、そこに一部葉酸がかかわっている可能性が指摘されているのです。

胎児の体をつくっていく時に、栄養が充分で必要な量足りている場合には正しく遺伝子が働きますが、不足や過剰な場合には正常とは異なった働きをします。この遺伝子の働きを制御している栄養素の一つが葉酸なのです。

妊娠の初期に葉酸をとる必要性は、今の母子手帳にも書かれています。更に、妊娠中、授乳中をふくめ、時期を問わずにしっかり摂らなければなりません。赤ちゃんの将来の健康、成人病の発症を予防するという観点からも、葉酸はとても重要なものです。

(2008年8月から掲載)