低栄養だと一度作られた細胞が滅る

なぜ、小さく生まれた赤ちゃんが成人病になりやすいのでしょう。

たとえば3200gで生まれた子と2600gで生まれた子を比べると、2600gの子どもは、腎臓のネフロンが30%少ないのです。ネフロンは血液の老廃物を濾(こ)して、そこからおしっこをつくる器官です。

小さく生まれると、なぜネフロンが少なくなるのか。そのメカニズムも動物実験から少しずつわかってきました。

栄養が充分でないと、栄養を供給して大事な脳を守ろうとします。その結果、腎臓や他の臓器へ行く血流が減るのです。

お母さんの栄養状態が悪くて腎臓に行く血液が減ると、そのためにせっかくできたネフロンの数が減ります。ネフロンが減ると元には戻りません。ネフロンの数は胎児期で決まってしまうのです。インシュリンをつくるすい臓のβ細胞も同じです。

栄養が足りなくなると、これらの重要な臓器で一度できた細胞が減るという現象が起こってしまうわけです。こうして少ない栄養で生きていいけるように体が変化するのです。

(2008年8月から掲載)