精液検査ってどんなもの?

男性不妊の検査は、まず、精液の状態を調べる「精液検査」をおこないます。最初の段階では、問診や触診の必要はありません。

精液採取室で精液を採取する

まず、「精液採取室」というプライベートが保たれた小部屋でリラックスして、精液をコップに出してもらいます。

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専門の検査技師による精液検査

婦人科での精液検査は、自宅で採取したものを持っていく場合が多いと思います。私のクリニックでは、なるべく新鮮な精液で正確に検査するために、必ず院内で採取しています。採取した精液は、室温で15~60分ほど静置した後、隣の検査室で検査を行います。

専門の検査技師が、顕微鏡を通して精子の状態をチェック。精液の色や量、ph(酸性度)、精子の数(濃度)、運動率、生存率、正常形態率などを調べます。

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すべて目視で数えます。[日本野鳥の会]で有名な「数取り器」を両手にもち、すばやくカチカチとカウント。これは熟練の技がいります。

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正常な精子、奇形の精子

検査は、単に精子の数をかぞえるだけではありません。精子を特殊な液体で染色して、死んでいる精子や奇形の精子を丹念に見分けていき、早くまっすぐに進んでいる精子の割合を数式をつかって計算します。とても手間のかかるものです。

正常な精子

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奇形の精子1

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頭がいくつもあります。

奇形の精子2

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左下の精子は、頭が大きすぎます。その右隣は、頭の形がいびつです。

死滅精子

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特殊な液体で染色すると、死んだ精子だけが赤く染まります。

精液の採取から検査結果が出るまでは、約1時間。この結果、もし「精液の状態が悪い」と診断されたときは、さらにくわしい検査に進みます。

たとえば、問診や触診、超音波検査、内分泌検査(血液検査)が代表的です。触診では、睾丸(精巣)に触れ、硬さや大きさを調べます。やわらかく小さい睾丸は、精子を作る働きが弱いとされています。

超音波検査では、陰嚢にタバコの箱のようなプローブを当てて精巣のなかの様子をモニターに映しだし、異常がないか調べます。内分泌検査では、血液を採取して、造精機能に関係するホルモンを測定します。精液中にほとんど精子がみられないなど、状態が非常に悪い場合は、染色体や遺伝子の検査も行います。

ただし、精液の状態は日によって変動するため、結果が悪かった場合は少なくとも2回は検査することをおすすめしています。当院は自費診療のため、精液検査は1回あたり1万800円です。

当院のデータでは、精液検査を受けた人の55%は正常。残りの45%は何らかの問題がみつかります。

「えっ!約半数に異常が!?」と驚くかもしれませんが、この数字にはワケがあります。なかなか赤ちゃんを授からないために当院を訪れる人が多いので、問題が見つかる人の割合が高いのです。逆に言うと、なかなか授からないカップルは、男性側にも原因があることを疑ったほうがいいということなのです。

(2011年5月から掲載)