男性不妊の検査は泌尿器科で

「気軽に精液検査を受けられる施設を」とはじめた当院ですが、実際に診療をはじめてみると、奥様が長年不妊治療を受けていたのに妊娠できなくて、最後の切り札として夫婦で訪れる方が多い。結果、男性側に原因が見つかって、「もっと早く受診していれば、妊娠の可能性が高かったのに…」ということもあります。

でも最近は、女性側が婦人科に行くのと同時に、当院を受診する男性も少しずつ増えてきました。

精液の状態を調べる「精液検査」は、不妊専門の産婦人科でも受けられますが、私は男性不妊を扱っている泌尿器科で受けることをおすすめします。

その理由は二つ。まず、泌尿器科のほうがより正確にくわしい検査を受けられるからです。

精液中の精子の数が少ないと、妊娠しにくくなるとよく言われていますが、実は、もっと大切なのは、精子の「動き」や「形」なのです。

極端なことをいえば、1個でも元気で健康な精子があれば、妊娠できます。でも、精子がどんなに多くても、速くまっすぐに進む運動能力がないと、卵子にたどり着き、受精することはできません。

精子の運動率などを測定する検査は、いくつかのステップを踏んで行うため、専門医や専門の検査技師がいる泌尿器科でないと対応が難しい。機械で簡単に精子の数や運動率を測定する方法もあるのですが、形や生存率を調べるには人間の目で検査するしかないのです。

また、婦人科で精液検査を受けて、精子の数が少ないなど何か問題が見つかっても、男性側のさらに詳しい検査や治療はできません。そのため結局、体外受精など女性にとって負担の大きい治療へと進むことになります。最近は、女性の年齢のタイムリミットを考えて、すぐに体外受精にステップアップする傾向に拍車がかかっている気がします。

夫婦の希望は「子どもがほしい」ということなのですから、最終的に授かることができれば問題はありません。けれど、長い時間とお金をかけて女性側の負担の大きい治療を受け、何度も体外受精をやったけれどうまくいかない…。

そんな場合は、いえ、できればそうなる前に、ぜひ泌尿器科で男性の不妊検査をしてください。精液の状態が改善すれば、体外受精や顕微授精の成功率が高くなります。また、体外受精をせずに、自然妊娠できるケースもあるのです。

(2011年5月から掲載)