成果をあげている「早産予知」、頸管長をチェック

従来の早産の検査・治療というのは、おなかの張りや出血などの自覚症状が現れてから行われていました。医学的に切迫早産とは、「妊娠22週以降に、[1]下腹痛や性器出血、破水などがみられ、[2]規則的な子宮収縮があり、[3]子宮口が開いて頸管が短縮し、早産の危険が高いと考えられる状態」と定義されています。

しかし、こういった症状が出たときには、すでに早産がかなり進行していて、治療をしても手遅れになるケースが多いのです。医療現場では、もっと早い段階で早産を予知することに力が注がれています。

当院では、まず、18週から28週まで、健診のたびに超音波検査で「子宮頸管の長さ(頸管長)」の計測を行っています。子宮と膣をつなぐ子宮頸管は、ふつう3~4cmあります。この長さが2.5cm以下になると早産のリスクは5倍(30~40%が早産)に、さらに1cmになると12~13倍(ほぼ100%早産)に上がります。

そのため頸管長が3cm以下になったら自宅安静を指示し、1週間ごとに経過観察をおこないます。2.5センチ未満になったら、入院管理に切り替えます。早産がどれぐらい差し迫っているかを判断するために、腟分泌物検査や血液検査も行います。子宮収縮抑制剤(張り止め)も使いますが、副作用があるので2日間程度の使用にとどめています。

細菌感染がない場合は、頸管縫縮術(頸管を縫って広がりを止める)という手術を行います。しかし、細菌感染がある場合は、頸管縫縮術をするとかえって早産を招く危険があります。また抗生物質を処方しても早産を防ぐことはできないという研究報告もあるため、当院では毎日、生理食塩水で腟洗浄をします。

感染・炎症を抑えるためには、風邪の予防と同じで、細菌を洗い流すことが一番効果的なのです。また、注射で黄体ホルモンを補うのは、世界的に普及している治療法で、一定の成果を上げています。

このように早産の兆候を早期に発見して、それぞれのケースにあった治療をほどこすことで、当院では32週未満の早産件数を半分に低下させることができました。

(2011年12月から掲載)