心のケアにうとい医療現場

流産や死産で赤ちゃんの死に直面することは、医師や助産師、看護師にとっても、つらく悲しい経験です。命を救うことができなかったやりきれなさや、ふがいなさ、何がいけなかったのだろうという戸惑い、そして、自分が責任を問われるのではという恐れもあるでしょう。

でも、「プロなのだから感情を表に出してはいけない」とか、「冷静に対応しなければならない」という気持ちが働いて、妊婦さんや家族にとって、冷たい、形式的な印象をもたせてしまうことがあるのです。

「そっとしておいたほうがいいだろう」と、泣いているのを見て見ぬふりをして、長い時間一人きりにさせてしまうこともあります。「なんて声をかければいいかわからない」と、腫れ物に触わるような態度になってしまうこともあります。

また、まわりに迷惑をかけないように気丈にふるまっている方を見ると、医療者側も「案外、大丈夫だ」なんて思ってしまうこともあるのです。本当は、感情を内に秘めているだけなのに・・・。

医療者が「大丈夫ですか?」と声を掛けて、「はい、大丈夫です。ありがとうございます」なんて答えさせてしまった結果、お母さんは大丈夫でない姿を見せられなくなってしまうこともあります。

決して悪気はないのですが、日本の医療機関はまだまだ心のケアの意識が低いので、こういった態度をとりがちです。

しかし、死産・流産を経験した方たちのお話を聞くと、「助産師さんも亡くなった赤ちゃんを大切にしてくれた」「先生も何度も丁寧に説明してくれたし、怒りも受け止めてくれた」「看護師さんが肩を抱いて一緒に泣いてくれた」ということが、亡くなった赤ちゃんの思い出とともに語られることも多いのです。

私たち医療者は、率直な気持ちで接することが大事なのだと感じます。

流産・死産など悲しい経験をした人たちが、思いや感情をできるだけ出せるように、私たち医療者が配慮して、支えていくことが必要だと思っています。

(2009年10月から掲載)