亡くなった赤ちゃんと過ごして
私たちの病院では、亡くなった赤ちゃんと産後一緒に過ごす時間を大切にしています。
生きている赤ちゃんと同じように、温かいタオルにくるんでお母さんに抱っこしてもらいます。 妊娠週数や奇形の有無、形の崩れなど、赤ちゃんの姿に関係なく、行っているものです。
このように言うと、たいてい「エッ・・・」という反応をする方が多い。お母さん自身も、亡くなった赤ちゃんと会うのを怖いと感じていますし、まるでお化けのような「モンスターイメージ」を抱いている方がほとんどです。
これまでの医療現場では、お母さんや家族に一度も会わせることなく、遺体を処理していました。
日本には伝統的に死を不吉なものとして忌み嫌う習慣がありますし、お母さんへの精神的ダメージを避けるために、会わせなかったのです。母体が回復したら、手続きだけを済ませてすぐに退院していただくのがふつうです。
しかし、「亡くなった赤ちゃん=なかったもの」のようにして過ごすことは、悲しみを受け止めることにつながりません。しばらく経ってから「赤ちゃんに何もしてあげられなかった」という後悔に襲われることが往々にしてあります。
亡くなった赤ちゃんと過ごすことで現実を見つめ、お母さん自身で何かを感じ、考える時間が大切だと思うのです。
突然、「会いますか?」と言われたら拒否感が起こるのは当然です。でも、亡くなっても、あなたたちにとってはかけがえのない、可愛い赤ちゃんですよ。こういうことをお母さんにお話しすると、たいていのお母さんは「会ってみたい」と言います。
(2009年10月から掲載)