後期流産(妊娠12週以降22週未満)・死産(妊娠22週以降)/用語解説

産科婦人科学会は、妊娠12週以降22週未満を「後期流産」、妊娠22週以降を「死産」と定義している。陣痛がはじまってしまい、流産・死産にいたるケースが多い。また、胎児が子宮内で亡くなってしまう「子宮内胎児死亡」もある。

原因

後期流産のうち半数は、前期破水や子宮頸管無力症、絨毛膜羊膜炎などで陣痛がはじまったことによる。

また、22週以降は、胎児の致命的な疾患(心奇形や尿路奇形、水頭症など)や、常位胎盤早期剥離によるものが多い。

他、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病、臍帯の異常、Rh血液型不適合妊娠、分娩異常で亡くなることも。検査や解剖をしても、原因がわからない場合が多い。

医療処置

12週以降になると、子宮内容除去術で掻爬(そうは)するには胎児が大きくなっているため、人工的に陣痛を起こし、経膣で亡くなった胎児を出産する。

処置の当日、「プレグランディン」という子宮収縮(陣痛)を起こす膣座薬を投与。3時間おきに膣座薬を入れていくと、だいたい半日ほどで陣痛がはじまり、出産する。翌日に退院するケースが多い。

しかし、満期(妊娠37週)に近い週数で胎児がかなり大きくなっていた場合は、膣座薬より強いオキシトシンの点滴によって陣痛を起こすケースや、母体の状態によっては帝王切開となる場合もある。

この場合、ふつうの出産と同じように1週間ほどの入院を経て退院する。

すでに亡くなっている赤ちゃんを、陣痛という痛みを伴って出産するため、非常につらく過酷な体験で、「帝王切開で赤ちゃんを出してほしい」という要望もあるが、次回の妊娠を考慮し、より安全性の高い経膣分娩が第一選択となる。

帝王切開を行うと、次回の出産でも帝王切開が一般的になり、また子宮に傷が残るため、次回の妊娠において癒着胎盤や前置胎盤などのリスクを高めるため。

手術後の経過

手術時の妊娠週数や、術後の症状などに合わせて、子宮収縮剤、胸の張りを止める薬、抗生物質などを投与することもある。

退院後はできるだけ安静に過ごし、入浴はシャワーのみ。退院後も胸の張りが強い場合、母乳を止める薬の服用を続け、マッサージに通うこともある。

1ヵ月後に検診をおこない、経過が順調であればそれで受診は最後。産後の生理は、1ヵ月から2ヵ月ほどで再開することが多いが、母体の回復具合によってケースバイケース。

次の妊娠は、2回生理を見送ってからが一般的(母体の状態にもよる)。

多くの場合、流産・死産が次の妊娠に影響を与えることはない。

しかし、次に妊娠したときは、前回、流産・死産したことを主治医に伝え、その時々の不安や疑問などはできるだけかかえないようにしたい。

その他

退院時には、病院が死産証明書を発行するので、役所に届け出る。

生まれてからわずかな時間でも生きて、数日後に亡くなった場合は、出生証明書と死亡証明書を役所に届け出る。この場合は戸籍に残るため、名付けをする。

生まれた後に亡くなった場合、かつては戸籍の残らないようにと死産証明書だけを提出してすることも多く行われていたが、現在は、きちんと出生証明書を提出している。

両親にとっても、赤ちゃんがいた証が残されたという思いもあり、受け入れられやすいようである。

また、役所では、斎場を指定し、日時も決めて、火葬許可証を受け取る(妊娠22週以降の場合、火葬までに死亡後24時間以上の経過が必要)。

手続き・移送は葬儀社に依頼しても、家族で準備をしてもいい。

供養については、それぞれの家庭の考えに合わせて。社寺での供養を選ぶ家庭、自宅にメモリアルスペースを作るなど自分なりの供養をする家庭、特に何もしない家庭など、さまざま。

(2009年10月から掲載)