5歳未満では診断がつきにくいADHD。「ちょっとだけ我慢」を教えて。

どの病気にどんな特性があるのかを正しく理解しておくと、いたずらに不安になることは少ないですし、子どもの気がかりな様子にも気がつきやすいので、障害ごとにお話していきましょう。

まずは、「ADHD(注意欠陥多動性障害)」。

これには、3つの特徴があります。
1.多動性:落ち着きがなくじっとしていられない
2.衝動性:よく考えずに思いついたままに行動してしまう
3.不注意:集中力がなく、ケアレスミスが多い

最近は、まだ1~2歳のうちから、「うちの子は落ち着きがないので、ADHDでは…」と心配する方がいます。

でも、幼い子にとっては見るもの全てが新鮮で、何にでも興味しんしん。

次から次へと遊びを変えていったり、ちょっと目を離したすきに遠くまでいってしまったりするのは、普通のことです。

ADHDは、5歳以前には診断がつきにくいのです。

だから、幼稚園や保育園などで問題のある場合は別として、あまり幼いうちからADHDを心配することはありません。

活発で落ち着きのない子でも、 年齢があがるにつれて、だんだん落ち着いてきます。

心配なのは、幼稚園年長さんや、小学校に入学してからも、まだ落ち着きがない場合です。

授業中もじっと座っていられない、集団行動ができない、友達に乱暴してしまうなど、 困っていることがある場合は、専門機関に相談したほうがいいでしょう。

ただし、ADHDではなく、何か本人の心に不安があって、 落ち着きがなくなっている場合もあります。

たとえば、家庭内でトラブルがあったり、虐待を受けていたりすると、不安感から落ち着きがなくなることがあるので、ADHDときちんと区別する必要があります。

ADHDは「ちょっとだけ我慢」を教えて

ADHDの場合、薬を使った治療も進んでいます。

脳の中枢神経に働きかける「メチルフェニデート」という薬を1日1回服用することで、脳を刺激し、脳の「ブレーキ」を効きやすくするのです。

また、日本でも平成21年の6月から「アトモキセチン」という薬も使えるようになりました。

<不注意>、<多動>、<衝動性>という3つが全部そろっている子どもには、薬が効果的で症状がおさまる事がよくあると言われています。

でも、薬が効かない子もいますし、食欲不振や不眠、頭痛などの副作用が出る場合もあるので、全ての子に薬を使用できるわけではありません。

薬だけでなく、子どもへの接し方や環境を調整することが大切です。

たとえば、気が散りやすい子には、教室の窓側には座らせないで、教壇の近くの静かな席に座らせるなどの環境を整え、「3分間座っていられたらシール1枚」というように、がんばり表などのルールを作って行動を変えていきます。

ADHDの子は、これまでに大人から叱られた経験が他の子どもと比べると圧倒的に多い事がよくあり、自己否定感を持ちやすいので、本人を肯定してあげること、小さなルールや目標を作ってそれを達成する喜びを味わわせ、やる気を伸ばすことが大切です。

症状が軽い場合は、薬を使わなくても、環境や対応を工夫するだけで、症状が軽くなっていきます。