出生前診断って何だろう

五体満足の健康な赤ちゃんを授かりたい、元気にすくすく育ってほしい……それは親にとって切実な願いでしょう。赤ちゃんが生まれる前に病気や障がいを見つけようという「出生前診断」は、そんな人類共通の願いから生まれました。胎児の病気がわかれば治療できることもあるし、出産時の医療体制を整えたり、親や家族の心の準備もできます。

みなさんが妊婦健診で受けている超音波検査も、専門家が詳しく診ていけば、さまざまな胎児の情報がわかりますから、これも「出生前診断」のひとつと言えます。

さらに近年、胎児の染色体異常や遺伝子異常を調べる技術が、急速に進化してきました。最近も、メディアで「血液検査によって、胎児のダウン症が高い確率でわかる新型出生前診断(NIPT)」が取り上げられ、大きな注目を集めました。産科医療の現場には、今、さまざまな出生前診断が普及しはじめています。

それと同時に、新たな問題も起こりはじめています。

出生前診断で重い障害があるとわかった場合に、どうするのか――。最終的に、「赤ちゃんを産むかどうか」という選択まで迫られるという問題です。

出生前診断はすでに世界各国で行われていますし、こうした検査が日本に流入することは、止められないでしょう。だからこそ、なし崩し的に検査が一般化するのではなく、私たち医師も、そしてみなさん一人一人も、出生前診断とはどんな検査なのか、自分にとって本当に必要なものなのかどうか、しっかり考えていかなければ、と思うのです。

(2012年11月から掲載)