発達障害の原因はまだ不明。個性と障害の境目は…?
発達障害は脳の機能のトラブルです。
では、その原因は、何なのでしょう?
発達障害の原因とは!?
今、世界中で研究がされているのですが、明らかになっていることはまだ少ないのです。
現段階でわかっているのは、自閉症やアスペルガー症候群は、遺伝の要素が強いということ。
遺伝といっても、ただ1つの遺伝子によって起きるわけではありません。
いくつかの遺伝子が組み合わさったときに、発症のリスクが高くなるのではないか? と考えられています。
素因の遺伝子や、きっかけになる遺伝子、防御する遺伝子があり、それらの組み合わせで起こってくるともいわれています。
ADHD(注意欠陥他動性障害)やLD(学習障害)では、妊娠中の喫煙や飲酒、妊娠中の健康上の問題がリスクを上げるともいわれています。
ただ、飲酒や喫煙をしたら必ず子どもが発症するというものではなくて、可能性が高くなるということです。
また、ウィルス感染や切迫早産など妊娠中の問題や、お産の時のトラブルなども関係しているという説もありますが、はっきりと解明されているわけではありません。
このように、まだ発達障害の原因がよくわかっていないのに、ネット上では、信憑性の薄い情報が多く出回っています。
たとえば、三種混合のワクチンが原因とか、ワクチンに含まれる水銀が原因という説がよく掲載されているようです。
確かに、イギリスやアメリカでは訴訟になったのですが、これについては大規模な調査をした結果、根拠がないと結論づけられています。
他にも、環境ホルモンや食品添加物が関係しているという説も、科学的に明らかになっていません。
発達障害は、現代では残念ながら予防することができません。
発達障害の子どもたちとその親をケアしてサポートしていくこと、そして、周りの人たちや社会が発達障害を理解し見守っていくことが、大切なのです。
個性と障害の境目は…
発達障害の診断は、難しいものです。
それは、障害を持つ子と、そうではない子の間に、明確な線引きをするのが難しいのです。
体の病気は、血液検査やレントゲン検査などの数値や形から、客観的に診断することができます。
発達障害は、血液検査やレントゲン検査などで診断できるものではなく、「こういう症状・特性がみられるから、この病名で診断する」という診断基準を使います。
従って、同じ診断でも、原因の違う病気が混ざっている可能性もあります。
昔は、自閉症の子は「明らかに周りの子と違う」ということで、診断がつく事が多かったのですが、今は、ふつうの子と自閉症の子の間に、明確な境目があるのではなく、1つの線でつながった連続体であると考えられています。
わかりやすくたとえると、白から黒までだんだん色が濃くなっていくようなイメージ。
白のところにいる子もいれば、黒のほうにいる子もいる、そして、白でも黒でもないグレーの子もいます。
誰にでも、苦手な分野はあるし、興味の偏りもあるもの。
コミュニケーションだって、得意な人もいれば、苦手な人もいるでしょう。
でも、中にはそれが極端で、社会の中でうまく対応していくことが難しい子もいます。
私たち医師は、「これだけの特性があると、周りの人が工夫して、その子に合った育て方をしてあげないと、子ども本人がつらいですよ」と判断して、診断をします。
(2009年10月から掲載)