どれだけ困っている?子どもにとって一番大切なこととは?
問題はどれだけ困っているか
似たような症状でも、子ども本人や家族、幼稚園や学校が、どれくらい困っているかによって、診断がわかれる場合もあります。
医師によって、判断が異なることもあるでしょう。
受診するご両親は「どの病名なのか」ということをよく心配されるのですが、大切なのは、「アスペルガー」とか「自閉症」という診断名ではなく、本人や家族が困っていることを解決することです。
子どもの特性を理解した上で、「どう接したらいいのか」、「どうやったら本人の力を伸ばせるか」、「学校でこんな問題が起きているから、 こんな風に対応しましょうか」とご両親へのアドバイスをします。
もし、発達障害の診断がつかなかったとしても、この家族は困っているなと判断したら、定期的に受診してもらって、アドバイスします。
発達障害のチェックリストで何個当てはまるか、と判断するよりも、「お友だちと仲良くできなくて、本人が困っている」、「授業中にじっとしていられなくて、先生も困っている」、「子どもと意思疎通がうまくとれなくて、私は困っている」――そんな“困っていること”が一つでもあったら、専門機関に相談・受診しましょう。
「子どもにとって」が一番大切
「障害」と名前が付くことに抵抗があって、幼稚園の先生から受診をすすめられたり、気がかりな症状があったりしても、相談や受診をしない親がいます。
どうしても嫌ということなら、無理をして専門機関に行くことはありません。
ただし、「子どもにとって何が一番大切か」ということをよく考えて判断することが大切だと思います。
というのも、発達障害を抱えている場合、一番つらいのは子ども本人だからです。
また親も、学校の先生からいろいろと苦情を言われて、気がつかないうちに、疲れてしまったりという事もありますし、それが子どもへの対し方に影響を及ぼしている事もしばしばあります。
たとえば、悪気はないのに、人が傷つくことを言ってしまう、授業中にうろうろしてしまう、というようなことがあったとします。
それが障害のためだとわからないと、親や先生は、子どもを強く叱ってしまいます。
「どうして、周りの子はできるのに、あなたはできないの!?」 「何度言ってもわからないやつだ」と、否定され続けるのです。
その結果、「自分はダメな子だ」と自己否定感を強く持つようになったり、いじめや登校拒否などの問題につながることもあります。
発達障害をもつ子どもは、育てにくさがあり、親が疲れきってしまうこともよくあります。
表情の乏しい子もいて、注意しても反省しているように見えない事もしばしばで、厳しく叱りすぎたりもします。
親が子どものためを思ってやっていることが、現実には虐待になってしまうこともあります。
大切なのは、親や先生など、周りの人が理解して、子どもを支えていくこと。
そのために、一番いい方法を考えていくことなのです。
(2009年10月から掲載)