発達障害Q&A。保健センターや小児科で相談することも視野に。
「うちの子の発達は…」と、今までに読者から寄せられた相談をピックアップ。森野百合子先生にお聞きしました。
Q1.あまり笑わない、目線が合わない…
Q2.気に入らないと、おでこを床に打ちつけます。
Q3.一度話せるようになったのに、急に言葉を発さなくなりました。
Q4.「バイバイ」など、まねっこを一つもできません。
Q5.2歳半なのに、まだおしゃべりできなくて…
Q6.オウム返しが多くて、会話になりません。
Q7.3歳なのに、いつも人の顔色ばかり伺っていて…
Q8.4歳。毎日ほとんど嘘ばかりつきます。
Q1.あまり笑わない、目線が合わない…
Q:「7ヵ月なのにあまり笑いません。まわりの子たちは声をだして笑っているのに…」、「8ヵ月なのですが、抱っこをしていてもあまり目線が合いません。」
A:誰にでもそうなのか、よく見極めましょう
「笑わない」
「目線が合わない」
この二つの症状は確かに気がかりな症状なのですが、いろいろな原因が考えられます。
たとえば、お母さんがお産の後、うつ状態になることがあります。
お母さんや、子どものケアを主にする人がうつ状態で、子どもに対して感情的な働きかけが少なかったり、赤ちゃんに対しての反応が少なかったりすると、これが原因で、赤ちゃんが笑わない事もあります。
誰に対しても笑わないのか、視線が合わないのか、よく見極める必要があると思います。
心配なときは、子ども家庭支援センターや保健センターなどの発達相談に行ってみましょう。
Q2.気に入らないと、おでこを床に打ちつけます。
Q:10ヵ月。急に癇癪をおこしたり、気に入らないことがあると、泣きながら床や壁やテーブルにおでこをぶつけるように何回もゴンゴン打ちます。
A:どんな時にするのかメモを取り、観察しましょう
気に入らないことがあると、自分の頭を打ちつけたり、髪の毛を引き抜いたり、自分の手を噛んだり……これは発達障害のサインということではなく、赤ちゃんなら誰でもやることがあります。
でも、何度も頭をぶつけてしまうと、そのことによって障害が起きる可能性があるので、頭を打ちつけないよう、気をつけてあげるといいと思います。
泣きながら、頭をゴンゴンぶつけるときは、何か気に入らないことがあるけれど、それがうまく表現できていないための事が多いです。
まず、どんな時に頭をぶつけるのか、少しメモを取るようにするといいでしょう。
「こんなことが、気に入らないんだ」とわかったら、できる限り本人の思い通りにさせたり、ただ頭ごなしに「ダメ」と言うだけでなく「~したかったんだね」と子どもの気持ちをママが言葉にして、受け止めるといいでしょう。
Q3.一度話せるようになったのに、急に言葉を発さなくなりました。
Q:1歳頃に、「ママ」と言えるようになり、二語文も出るようになってきたのですが、 1歳半頃から急に、言葉を発さなくなりました。いつもぼんやりしていて、あまり反応してくれません。
A:要注意のサイン。早めに受診しましょう
これまでできていたことが、急にできなくなったというのは要注意のサインです。
脳神経系の病気の可能性も考えられますし、代謝性の疾患によってこのようなことが起きることもあります。
また、自閉症のひとつに、一度話せるようになっていた言葉が急に話せなくなってしまう「小児期崩壊性障害」と呼ばれるものがあります。
これ以外どこか具合の悪いところがある可能性もあるので、できるだけ早めに小児科を受診してみるといいと思います。
Q4.「バイバイ」など、まねっこを一つもできません。
Q:もうすぐ1歳1ヵ月の男の子。
いまだに「バイバイ」や「パチパチ」などまねっこを一つもしません。私がやってみせるのですが、まったくできません。
A:ほかの発達と合わせて考えましょう
まねっこはコミュニケーションの発達をみる1つの手がかりになりますが、個人差があるものです。
まねっこだけでなく、他の発達に遅れがあるかどうかということが関係してきます。
お母さんと他のコミュニケーションができていれば、それほど心配いらないと思います。
Q5.2歳半なのに、まだおしゃべりできなくて…
Q:2歳半なのに、まだほとんど言葉を発しません。問いかけに対して理解しているのですが、おしゃべりはできないんです。
A:しばらく様子を見て、話さないようなら相談を
2歳半を過ぎても言葉を発さないのは、要注意だと思います。
3歳くらいまで様子を見て、それでも言葉をほとんど話さないようなら、保健センターの発達相談などで相談するとよいと思います。
Q6.オウム返しが多くて、会話になりません。
Q:2歳10ヵ月の娘のことですが、言葉の発達が遅いみたいです。私が話したことはおうむ返しで返ってきます。
たとえば…私が「ごはんたべる?」と聞けば「ごはんたべる?」と同じ言葉が返ってきます。 似たような質問をしてもそっくり返ってきて、まったく会話になりません。
A:オウム返し以外の言葉があるかどうかで違います
お母さんの言葉を「オウム返し」する子は多いものです。
ただ、オウム返し以外の言葉があるかどうかでずいぶん違ってきます。
もし、オウム返し以外に、言葉があまりないようでしたら、少し心配なサインだと思うので、保健センターなどの発達相談窓口で相談してみてください。
Q7.3歳なのに、いつも人の顔色ばかり伺っていて…
Q:3歳の男の子。
私も夫もそんなにひどく怒ったことはないのですが、たまにおもらしをしたり、ちょっと悪い事しただけで、ごめんなさいと泣いて謝ってきます。いい子なのですが、いつも人の顔色ばかりを伺っていて、保育園でも1人でいるようで心配です。
A:不安が強いので、たくさんほめてあげて
非常に不安感が強いお子さんだと思います。
これはその子の個性の場合もありますし、何か失敗した経験が本人の中でトラウマのように残っていたり、以前に怒られたことが尾を引いていたり…ということもあるでしょう。
たくさんほめてあげて、少し自信をつけさせてあげることが必要だと思います。
ほかの子と比較したりしないで、子どもができたことをいっぱいほめてあげてください。
また、外で、何か嫌な事が無かったかどうか話を聞いてあげる事も必要かもしれません。
Q8.4歳。毎日ほとんど嘘ばかりつきます。
Q:4歳の息子は毎日ほとんど嘘ばかりつきます。幼稚園の話を聞いていても、何が本当のことなのかわからないほどで、会話になりません。
A:お子さんとたくさん会話をしてみましょう
子どもは、嘘をつきやすいものですが、悪気があって嘘をつくつもりで言っているのかどうか、実際にはわからないと思うんですね。
状況がうまく理解できず、誤解をして話しているのかもしれないし、また、ファンタジーの世界でお話をつくっているのかもしれません。
わかっていても、怒られるのが怖くて、つい、見え透いた嘘を行ってしまう事もあるでしょう。
ファンタジーの世界で話をつくっていても、それ自体は悪いことではありません。
もし、子どもが本当のことを言っていなかったとしても、たくさん会話をしましょう。
子どもが安心して、 困った事を話せたり、してしまった悪い事を正直に言いやすくする雰囲気や、親子関係を、お子さんとの間に作る事が大事だと思います。
そして、幼稚園の先生にも相談をしてみて、もし気がかりなことがあるということでしたら、相談機関に行ってみるといいと思います。
もし、子どもに気がかりな行動がみられたり、困っていることがあったら、まずは、地域の保健センターや保健所、子ども家庭支援センター、児童相談所などで行っている「発達相談」を利用するといいでしょう。
保健センターや小児科で相談する
発達相談の窓口では、保健師や心理士、ケースワーカーなどの専門家が対応します。
小児科医や児童精神科医が相談に応じているところもあります。(自治体によって異なります)
乳幼児健診で、医師や保健師に相談するのもいいですし、まずはかかりつけの小児科の先生に相談して、意見を聞いてみるのもいいですね。
必要であれば他科を紹介してくれます。
本来、発達障害を扱う医療機関は「児童精神科」です。
でも、残念ながら、日本には児童精神科医が非常に少なく、発達障害の診断・治療のトレーニングを受けた医師も少ないのです。
しかし、一般の「小児科」や、「小児神経科」、「精神科のクリニック」の先生でも、子どもの発達障害についてトレーニングを受けていたり、熱心に勉強している先生はいます。
一方で、大人を対象としている精神科では、子どもの発達障害はわからないこともあります。
「精神科」や「心のクリニック」と標榜している医療機関でも、子 どもを診ているかどうか確認したほうがいいと思います。
(2009年10月から掲載)