インタビュー

6年間の不妊治療を経て「里親」となった漫画家:古泉智浩さんロングインタビュー

50574 views

なぜ自治体の「里親」制度を選択したのか

民間の団体であれば積極的に「特別養子縁組(*1)」を推進していますよね?


最初は「特別養子縁組」を考えていたので、インターネットでいろいろと調べ、養子縁組を斡旋する民間団体があることを知りました。

民間団体は養親の必須条件として「行政の里親認定」が必要な団体がいくつかあり、養子縁組には、まずは行政の里親認定取得だ!ということで、早速僕が住んでいる地域の児童相談所に相談しにいきました。

里親になるために研修を受けるのですが、研修中、実際に子どもを養育している養親さんたちにお会いしたとき「養子でも里親でも関係なくどちらもとてもいいものだよ」とおっしゃっていたんです。この言葉がすごく印象的でした。

研修・調査が終わり、あとは正式な認定状を頂くだけというタイミングで、なんと児童相談所から「赤ちゃんを預かって欲しい」という連絡がありました。

ですから、民間団体に養子縁組の申し込みをするよりも先に、「里親」になってしまったんです。
連絡を受けた最初は戸惑ってしまったのですが、自分の中で「断る」という選択肢はありませんでした。

今思えば児童相談所から何も連絡がない状態が続いていたら、民間団体に申し込みをしていたかもしれませんね。
あとは民間団体にもよりますが、夫婦の年齢制限などがあったりもしてちょっと難しかったことも事実です。

(*1)戸籍上の親子となるべく、養子縁組を前提として児童を養育する制度。
一方で里親制度の場合は子どもの家庭復帰を目指して一定期間代替え的に家庭養育をする制度。

いつかは親元へ戻す事を前提とした里親制度。

もし実親さんが子どもを迎えにきたらどう思いますか?


そうですね、そのことについてはいつも考えています。
実親さんが我が子を里親へ委託しているという事は、いずれは迎えにくるかもしれないのですが、僕たちは今預かっている子どもといつか特別養子縁組をしたいと思っています。

特別養子縁組という制度は、子どもが6歳になるまでに裁判所に申し立てして縁組が認められれば、自分たちの戸籍に「長男・長女」と記載する事ができるので事実上実子と同じになるんです。

ただ特別養子縁組をするためには実親さんたちが親権を放棄しなければならないので、そこがなかなか難しいところなんです。

「里親会」(里親同士が集まって交流する会)の方達に聞いてみると、あまりそのような心配はしなくても大丈夫だとおっしゃるのですがやはり不安な気持ちにはなりますよね。

いつかは真実告知をしなければならない…

古泉さんならどのようにお子さんに告知をされますか?


うちのママと、産んで下さったママと、病院のNICU(新生児特定集中治療室)の看護師さんの三人のママがいるんだよ、と。

産まれたときとても小さく、当初病院のNICUにずっといたのですが、そこの担当看護師さんにはとても良くして頂いたもので。
真実告知をする際はそのスタッフさんのこともママなんだよと伝えたいと思っています。

1      «      1      2      3      »      4

公開日:2016/06/01