インタビュー

6年間の不妊治療を経て「里親」となった漫画家:古泉智浩さんロングインタビュー

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不妊治療はこれからも挑戦してみたいとは思いますか?


一回位はやってみてもいいかなと思いますね。
今まで不妊治療については妻の意見に従ってやっていたのですが、正直あまり良い結果を招かなかったんですよ(笑)。

次にもしやるとしたら病院選びから僕が全部主導権を握ってやると思います。
里親を提案したのも僕なんで。
妻が選んだクリニックが東京だったので、治療の度に上京していました。
薬を冷やすだけの為に東京にある僕の小さな事務所に冷蔵庫を買ったり…治療費のほかに交通費もたくさんかかりましたし本当に大変でした。

もし今後実子が産まれた場合、現在預かっているお子さんとの関係はどうなると思いますか?

そうですね…いま預かっている子どもの絶対値が高すぎてしまって…。
もうスーパースターの輝きをはなっているんですよ。

むしろ実子に対して同じ位可愛がれるかどうか…そっちのほうが心配です。(笑)
子どもに優劣つけるなんてどうかとは思いますが…

まだ日本ではマイナーな里親制度。今後どうなっていくと思いますか?


なぜ広まらないのかということについては、里親自体の数が少ないとか言われていますよね。外国では里親制度が身近にあるから口コミで広まっていくと聞いた事があります。

日本では僕のように里親自身が何かを発言するという事自体がとても稀のようです。
児童相談所の方が言うには、里親が目立つ事に対して危険性があるからと注意されるんです。

何らかの事情で子どもと引き離された親が児童相談所や里親に対して恨みや反感を持っているかもしれないので、実子の居場所がわかると連れ帰ってしまったりすることもあるそうなんです。

後でその事を知ってヒヤッとしました。
僕の場合、本を出してしまって名前もバレているのでちょっと調べれば住所もわかってしまいます。

また実親さんが里子に出すこと自体もまだまだ少ないんです。
何らかの事情で親元で暮らせない子どもは、養護施設にとどまってそのまま大人になってしまうことが大半なんですよ。
施設に子どもがいれば実親さんも都合の良い時間を作って、子どもに会いにいけますしね。

児童相談所としては里親制度をもっとすすめていきたいと聞きます。
どうしても赤ちゃんを家に迎え入れたいというご夫婦にとってはとても良い制度だと思うのでぜひ里親制度を視野に入れて頂きたいですね。

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お子さんの話になると生き生きとした表情で楽しそうに答えてくれた古泉さん。
育児に奮闘中の古泉さんはの悩みは「あまりにも元気すぎて少々手を焼いていること!」なんだそうです。

現在日本における要保護児童は約4万7千人が存在し、里親に委託されているのはわずか12%(2012年時点)。
出典:公益財団法人 全国里親会
http://www.zensato.or.jp/satooya/s_system.html


この数字からも里親制度は認知度がまだ低い事が分かります。
虐待などによる保護児童は増える一方、家庭を通じた暖かい養育ができる里親制度が今後より広く認知される事を願います。


※里親・里子についての個人が特定できるような情報は公にできないため表現を一部変更しています。

古泉智浩(こいずみ・ともひろ)

1969年生まれ。 1993年、ヤングマガジンちばてつや賞大賞を受賞し漫画家デビュー。 シュールな作風のマンガ作品を発表するかたわら、2015年12月に刊行された子育てエッセイ『うちの子になりなよ ある漫画家の里親入門』(イーストプレス刊)がSNSを通じてブレイク。すでに3刷が決定するヒット作となっている。
自身の赤裸々な人生と、あまり知られていない「里親制度」についてわかりやすくまとめられた内容が評価され、幅広いメディアからいま注目を集める存在に。
ブログ:古泉智浩の『オレは童貞じゃねえ!!』
http://koizumi69.hatenablog.com/
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公開日:2016/06/01