着床前診断(PGD)[妊娠前]/出生前診断・解説辞典

体外受精の際に、受精卵の遺伝子や染色体を検査する。国内では臨床研究として行われていて、親の染色体異常による反復流産や、重い遺伝病の人だけが対象。

時期

体外受精の前

対象となる疾患

筋ジストロフィーの一部、Leigh脳症、オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症、染色体転座による習慣流産など。

検査方法

体外受精や顕微授精で、受精卵を子宮に戻す前に行われる。受精卵が成長をはじめてから3日目頃に、胚に小さな穴をあけて、「割球」という細胞1~2個を取り出し、DNAや染色体を検査する。

概要

現在、国内の着床前診断は臨床研究段階の検査で、事前に日本産科婦人科学会の許可を得ることが必要で、対象は厳しく制限されている。認められているのは、妊婦や夫が何らかの遺伝子・染色体異常をもっていて、子どもが重症の遺伝病を発症する可能性がある場合や、習慣流産(反復流産を含む)の原因になっている場合。2005年から2008年までの3年間で、44人の女性に行われ、実際に誕生した赤ちゃんは3人。

費用

5~15万円

注意点

検査の際に、受精卵から一部の細胞を取り出すが、このことが受精卵や胎児にどのような影響を与えるかは、まだ研究段階。

国内で認められているのは、特定の疾患にかかわる染色体や遺伝子の検査だけが対象。

タイやアメリカでは、男女産み分けのために実施する施設もある。

技術的には、あらゆる染色体や遺伝子異常のスクリーニング検査(PGS)をすることも可能であるが、このような網羅的な検査は診断でなく「遺伝子のスクリーニング」であり、倫理的な問題が多く、PGSを禁止している国もある。日本産科婦人科学会も認めていない。

(2012年11月から掲載)