リスクの本当の意味

「薬によってリスクが高くなる」と言うと、みなさん30%とか50%などの高い確率で赤ちゃんに障害が出るイメージを持つようです。

たしかにそういう薬もありますが、しかし、そんな薬は危なくてしょうがないので、実際には使われなくなっていきます。

40年くらい前からは、薬を開発する際に生殖試験も行われています。ラットやウサギなどの妊娠動物に薬を投与して、赤ちゃんに異常が起きないかどうかを調べるのです。

妊娠中に飲むと高い確率で赤ちゃんに異常を起こす薬は、確かにあります。

それでも、薬のリスクは、高くなってもせいぜい数%で、自然の3%のリスクを数%上回るくらい。4%とか5%、6%になる、というレベルです。10%を超えるものは一部の抗がん剤などごくごくわずか。ふつうの人が手軽に入手できる薬で、うっかり飲んで異常を起こすような薬はそうそうあるものではないんです。

「リスクが倍になる」というと、みなさんすごく心配になると思いますが、これも自然発生3%の倍という意味ですから、6%ということです。

これを逆に考えてみてください。何の異常もなく生まれてくる確率が自然の97%から、3%低くなって94%になるということです。

たとえ1%でもリスクが高くなるのはイヤ、という人もいるでしょうけれど、こうして考えてみると「その程度か」となることが多いのです。

こうした数字の根拠もなく、医師から「この薬にはリスクがある。安全とは言えないけれど、どうする?」と言われたりすると、すごく心配になるけれど、「94%と97%を比べてみてどう?」と言われると、「なんだ、あまり変わらない」となることが多いのです。

こうした数字の見方、理解の仕方というのは、本当はすごく難しいものなんです。

(2007年9月から掲載、2014年11月改訂)