妊婦への安全性は確立しない?

薬の取り扱い説明書に「妊婦に対する安全性は確立していない」と書かれていることがあります。

でも、これも「だから危険」という意味ではありません。

安全性を確立させるためには治験(薬を飲んでもらってどうなるかというテスト)をやらなければなりません。

「赤ちゃんに異常が出るかどうか、試してみたいけど薬を飲んでもらえますか」と言われて、「いいですよ」と言う女性はいないでしょう。だから、妊娠中の女性への治験そのものが存在しないんです。

また、「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること」と書いてあることもあります。

この意味は、「薬のリスクよりも治療のメリットのほうが上回ると思ったときに使ってください」ということです。

これは、当たり前のことですね。薬のデメリットのほうが大きかったら、薬を使う意味がない。妊婦さんに限らず、誰に対しても使うわけがありません。

「妊婦に対する安全性は確立していない」も、「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること」も、だから「薬が危険」という意味ではなくて、きちんと解釈すると「この薬は必要な人が飲んでください」と書いてあるのと同じなんです。

(2007年9月から掲載、2014年11月改訂)